1.

論文

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大桃, 道幸
出版情報: 群馬保健学紀要.  28  pp.113-120,  2008-03.  群馬大学医学部保健学科
概要: application/pdf<br />Departmental Bulletin Paper<br />英国の小説家・詩人Thomas Hardy の短編小説For Conscience’ Sake は,20年前に捨\nてた女性 を探し出し,彼女と結婚することで,過去の過ちを正そうとする男の物語である。こ\nの作品は題名にある〈良心〉の問題がテーマであると簡単に理解され,物語の筋立ても比較的\n単純であることから,従来あまり研究されてこなかった。しかし,丁寧に吟味してみると,こ\nの作品には良心の問題以外に,孤独,女性の自立,階級意識,〈農村〉対〈都会〉,更には遺伝\nなどのテーマやモチーフが巧みに織り込まれていることが分かる。その意味で,本作品は\nHardy の長編小説の要素が凝縮されていると言って良く,Hardy の長編小説を理解する上でも,\n本作品の理解は非常に有益であると言えよう。また,主人公のMillborne が最後に達する諦観\nの境地は,作者自身の心情を反映したものでもあろう。 続きを見る
2.

論文

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大桃, 道幸
出版情報: 群馬保健学紀要.  26  pp.125-132,  2006-03.  群馬大学医学部保健学科
概要: application/pdf<br />Departmental Bulletin Paper<br />Thomas Hardyが小説家としての円熟期に書いた短編小説The Son's Vetoは,村の牧師Twycott氏と結婚した田舎 娘Sophyの悲劇的な人生を描いた作品であり,中心テーマは階級(意識)である。Sophyの結婚は彼女自身の階級意識によって規定され,Twycott氏の死後,彼女の人生は息子のRandolphの階級意識によって支配される。Randolphは階級意識が強く,自分の出世しか念頭にない偏狭な人間である。Hardyは彼の人物像を過不足なく描き,彼を非難することで,このような人間性に欠けるエリートを育てるパブリックスクールや大学の教育を糾弾している。また,The Son's Vetoには,階級の問題と絡み合う形で,農村と都会の対立というテーマが織り込まれていて,Sophyとその息子との対立は農村と都会との対立であるとも理解できる。Hardyの長編小説では,主人公が外の社会に出て行くことにより,階級という障壁にぶつかり,希望をくじかれるというパターンが一般的である。しかし,The Son's Vetoでは階級の壁が家族の中にまで侵入しているのが特徴で,階級の問題がより深刻化していることを示すものであり,Hardyの危機感の現れと思われる。 続きを見る
3.

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大桃, 道幸
出版情報: 群馬保健学紀要.  25  pp.139-148,  2005-03.  群馬大学医学部保健学科
概要: application/pdf<br />Departmental Bulletin Paper<br />英国の小説家・詩人Thomas Hardyの短編小説The Melancholy Hussar of the German Legi onはナポレオン戦争時代を背景に,イングランド南部丘陵地帯にやって来たドイツ騎兵部隊の一兵士とその地に住む娘との悲恋を描いた作品である。この作品は良く知られてはいるものの,ほとんど研究されておらず,単なるメロドラマに過ぎないといった低い評価を受けたりもしてきた。しかし,丁寧に読んでみると,この作品にはHardyがよく取り上げている人間の孤独,女性と結婚,愛と義務,更には上流階級批判といった重要な要素が巧みに織り込まれていて, Hardyの文学を理解する上で見落とせない作品となっている。また全体としては,女主人公Phyllisに共感する語り手によって語られる物語にノスタルジックな雰囲気が漂い,読後の余韻も深く,読者に忘れがたい印象を残す作品に仕上がっている。本作品は,小説家として円熟期にあったHardyの力量を随所に感じさせる優れた作品であると言って良いだろう。 続きを見る
4.

論文

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大桃, 道幸
出版情報: 群馬保健学紀要.  24  pp.103-110,  2004-03.  群馬大学医学部保健学科
概要: application/pdf<br />Departmental Bulletin Paper<br />トマス・ハーディの短編小説To Please His Wifeは, 野心のために夫と二人の息子を失った女性ジョアンナの半生を描いた作 品である。ハーディの短編小説は長編小説に比べ, 過小評価されてきた嫌いがあり, To Please His Wifeもまたその例に漏れず, 因果応報, 自業自得の単純な物語として片付けられがちである。しかしながら, 小説家ハーディの円熟期に書かれたこの作品はその簡潔なペーソスあふれる筋立ての中に, 結婚, 階級(意識), 野心, 教育, 出世といった同時期に書かれた長編小説に共通するテーマが織り込まれていて, ハーディ文学を理解する上で見落とせない作品となっている。ハーディはまた, 主人公のジョアンナを野心のために身を滅ぼした一人の愚かな女性から〈船乗りの妻〉という普遍的な悲劇のヒロインへと高めることにより, To Please His Wifeを時空を超えた感動的な悲劇的作品にしている。 続きを見る