上肢のパワーアシストにおける脳波を用いた関節トルクの推定に関する研究

フォーマット:
学位論文(AKAGI収録)
責任表示:
梁, 宏博 ; Hongbo, LIANG
言語:
英語
出版情報:
2020-03
著者名:
バージョン:
ETD
概要:
障害者の数が増加するとともに,介護者の負担も増加していく.特に重い荷物を持ち上げる荷役動作や介護者が患者を抱えての移動の際,上肢の肩と肘の関節に大きな負担がかかる.したがって,肩と肘関節の屈曲と伸展方向でパワーアシストを行うことは非常に有意義である.そのため現在は,世界中多くの国が外骨格ロボットによる様々なパワーアシスト装置を開発している.これまでのパワーアシスト装置の制御信号は,主に力/トルクセンサーと筋電センサーを用いて取得していた.しかし,一般的な力センサーは高価であり ,また筋電センサーの場合,肩関節・股関節などの多関節機構において,各筋肉の動作を高精度に推定するためには,多数のセンサーを用いなければならない.さらに,加齢に伴う筋力の減衰により,これらのセンサーの効果も大幅に低下していき,現在に至るまで,これらの問題に対する適切な解決策はない.一方,近年脳活動をデコードして,運動意図の指令を生成することで,外部の装置を制御するBrain-Machine Interface(BMI)技術が大きな注目を集めており,その研究が進められている.BMI 技術は筋肉以外の通信方法を提供するため,脳の完全性を利用して外部装置を制御することにより,体の欠陥を補い,または体の機能を高めることができる.これによって,BMI 技術は,筋電やその他の信号に基づく制御技術よりも正確で自然な制御方法である.初期のBMI 技術はヒトの失われた,もしくは麻痺している運動機能の代行,あるいは復元を目的として,様々な装置が開発された.現在,BMI 技術を用いてコンピューターのカーソル,車椅子,キーボード,リハビリテーション機器,外骨格ロボットなどの制御が実現されている.体を動かすことができない障害者のために,将来的には医療リハビリテーションや福祉分野でより広く使用されることが期待されている.近年,ヒトの意思に関係する脳活動を制御信号に変える事を目的とし研究が進められている.しかし,現時点では重労働従業員や介護スタッフなどの健常者向けのBMI 製品はほとんどない.このため,本研究では上記の問題をBMI 技術を用いて解決するため,脳活動から関節トルク情報を抽出および推定する手法を提案し,健常者のQoL(Quality of Life)向上と作業現場における作業効率の向上を目指す.私たちの研究チームは2016 年に脳波信号から肘関節のトルクを推定することに成功した.そのため,本論文では主に肩関節のトルクの推定に着目し,また肩と肘関節の連動動作時の特徴の抽出と運動パターンの認識手法を検証することにより,BMI 技術に基づく上肢パワーアシストシステムの構築を行う.本論文は,BMI 技術に基づいた肩関節の屈曲と伸展運動においてパワーアシストを適用する世界初の研究報告である.本論文では,まず擬似拮抗筋の概念を導入することにより,脳波に基づくパワーアシストシステムの構築する手法を提案する.具体的には,まず主成分分析により特徴を抽出し,脳波-トルクの線形モデルを構築,そして肩関節のアシストに必要なトルクを推定する.実験結果より,本BMI 技術を用いて健常者にパワーアシストを行うことが可能となることが示された.また,肩関節の屈曲と伸展運動による脳波の変化部位や特徴も明らかにした.この特徴を用いたモデルを構築することにより,パワーアシストに必要となるトルクの推定に成功した.さらに特徴を抽出する際に,注目する脳波の周波数帯域を以前の肘関節の研究方法よりも広く,そして細かくすることで,この手法の汎用性をも同時に示した.これらの内容について第5 章にて述べる.次に,脳波信号は時変信号であることを考慮した上で,時変信号によるシステムへの影響を減らすために,脳波の変化と運動の間の遅延を考慮した線形モデルを再構築し,肩関節のパワーアシストに必要なトルクを推定した.実験結果より提案した手法の有効性を示している.またこの手法により,連続動作のトルクの推定にも成功したため,この手法に基づくリアルタイムでのパワーアシストを行える可能性が示された.これを第6 章にて述べる.また肩と肘関節の連動を実現するためには,まず様々な運動パターンの脳波の変化の特徴を明確化し,抽出する必要がある.したがって第7 章では,特徴を効果的に抽出できるいくつかの手法について説明し,検証した.実験結果より,これらの手法の有効性を確認し,また抽出された特徴を用いて,脳波に基づく肩と肘の運動パターンの識別を実現することが可能となることを示唆した.BMI には2 つの絶対的な課題がある.1 つ目は,脳から適切な情報を取得する手法である.つまり「脳から機械へ」の流れであり,脳の出力信号をキャプチャし,ニューロンが何をしているかを理解することである.本論文の第7 章まではこれに関する究明である.2 つ目は,正しい情報を脳に入力する手法である.つまり「機 械から脳へ」の流れであり,機械を用いて脳に情報を入力することで刺激し,脳の特性に変化を促すことを示す.したがって第8 章にて,2 つ目の課題に対する手法の試行と検討を行う.まず脳の可塑性を検証するためにBMI ユーザーを訓練し,訓練の有効性とそれに基づく脳活動の変化について検討した.実験結果より,視覚フィードバックを用いた訓練による特定の脳波成分の変化分の増強を観測することができたため,新たな特徴量として有用できる可能性を見出した.これらの結果は,BMI 技術が今後の我々の生活に広く浸透するための将来性の高さを証明するものだと断言できる. 最後に第9 章にて,まとめを行い,今後の展望について述べる.<br />学位記番号:工博甲26 続きを見る

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